東京地方裁判所 昭和47年(ワ)8910号・昭46年(ワ)6118号 判決
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【判旨】
一事務管理に基づく商法五一二条の主張について。
商人が他人のために事務を処理した場合には、その他人との間に合意が存しない場合でも商人は商法五一二条に基づきその事務処理に関する報酬を請求することができるものと解されるところ、原告がかねてより宅地建物取引業者たる大宝産業株式会社及び合資会社石樫商事に在籍し、不動産仲介業に従事していたことは前判示のとおりである(<証拠>によれば、原告は右石樫商事に顧客を世話したときには同会社からその利益の二割を得ることとなつており、また本件土地買収が成功し報酬金を取得したときには同会社にその二割を供する予定であることが認められるから、原告が右会社の使用人とはいえ、単なる労務提供者の如きものでないことは明らかである。)。従つて原告は、商人として本件土地の仲介業務に関与していたものと認められ、反証は存しない。
しかして、原告の本件土地に関する一連の仲介活動は主として売主たる土地所有者側のためのものであると解すべきことは前判示のとおりであるが、その一部については例えば取付道路用地の物色、確保の如き本来被告のなすべき事務も認められるところ、<証拠>によれば、原告も被告のためにする意思で右事務を処理したことが窺える。従つて、右の一部の事務については、原告の被告のためにする事務管理と解するのが相当である。
しかしながら、原告が被告に対し、報酬その他一切の金員について事前又は事後にその請求権を放棄する旨約していたことは前示のとおりであるから、原告の右事務管理に基づく報酬請求権も既に放棄されたものというべきである(放棄の対象、範囲に関する原告の主張を採用しえないことについては前示のとおり。)。
従つて、その余の点について判断するまでもなく、事務管理に基づく商法五一二条による原告の主張は失当として排斥を免れない。
<中略>
三不当利得の主張について。
<証拠>によれば、原告は本件土地の仲介業務に携つて以来数千万円にのぼる出捐を余儀なくされたことが窺えるが、前判示のとおり原告の仲介業務は主として売主たる土地所有者のためのものであつたと解せられるから、その仲介業務の結果被告と本件土地所有者との間に売買契約が締結されるに至つたものであるにせよ、原告の右出捐に相当する利益全てを被告が享受したものとはにわかに解し難く、また被告が右のような利益を享受した面があるとしてもそれは大部分原告の土地所有者のためにする仲介活動の反射的利益というべきであり、その間に因果関係を肯定することは困難であり、本件全証拠によるもこれを認めることはできない。
また、原告が本来被告のなすべき業務に関してみずから行つた行為に関しては、被告に相応する利得が生じ、原告のこれに要した出捐との間に因果関係を肯定する余地はあるものの、前示のとおり原告は被告に対し本件土地に関する一切の請求権を放棄しているものであるから、右利得の返還を求めるに由なきものというべきである。
(小谷卓男)